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病気について

甲状腺の病気について

文責 谷 淳一

甲状腺のはたらき

状腺とは頚部気管前方、甲状軟骨の下方に位置する(のどぼとけの下)約15g程度の蝶の形をした小さな臓器です。ここから、甲状腺ホルモン(T3,T4)を出し、全身の代謝を調節しています。このホルモンは私達の脳の脳下垂体と呼ばれる部位から出る甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって、血液中でいつも一定の値になるように調節されています。 甲状腺ホルモンは、心臓の動きや、血圧、体温の調節といった全身の代謝をつかさどり、また赤ちゃんにとっては中枢神経系の発達に必要不可欠なものです。

甲状腺の病気

甲状腺には、その働きがおかしくなる病気(機能異常)と形がおかしくなる病気(腫瘍)があります。

  1. 機能異常

    甲状腺のホルモンが多すぎたり、少なすぎたりしておこります。

    <ホルモンが多すぎる病気>
    代表的なものにバセドウ病があります。(グレーブス病ともいう)これは血液中に自分自身の甲状腺を刺激しつづける物質(自己抗体・抗TSHレセプター抗体という)ができ、甲状腺ホルモンをどんどん産生してしまう病気です。甲状腺は腫れ、患者さんによっては、目が出てくる人もいます。

    ホルモンが高いと次のような症状が出ます。
    食欲が旺盛になるのに体重が減る。汗をたくさんかく。暑がりになる。手が震える。動悸がする。脈が非常に早くなる。甲状腺が腫れる。いらいらする。筋力が低下する。目が出てくる。体がきつい。などです。
    バセドウ病である場合、このような症状は放っておいても治りません。専門の医師によって適切な治療をうけることが大切です。また、他の原因で甲状腺ホルモンが高くなっていないかどうか、詳しく調べる必要があります。
    治療は、甲状腺ホルモンの産生を抑える薬を服用します。この薬は長期にわたり服用することが必要です。自分の判断で中止するとすぐ再発します。服用する量も医師に調節してもらうことが大切です。またどんな薬でも副作用を起こす可能性がありますので、医師とよく相談のうえ体にあった治療を選んでもらうことが大切です。また、薬が効かないときは、手術や放射性物質で治すこともあります。
    目が飛び出してきた時には、入院のうえ特殊な治療をしなくてはなりません。甲状腺のホルモンは薬でコントロールできますが、目が飛び出してしまうとなかなか元に戻りません。早めに専門医に相談しましょう。
    また、バセドウ病を治療していない人が他の病気やけがをすると治りが悪いだけでなく、命をおとすこともあります。

    <ホルモンが足りない病気>
    代表は、橋本病です。甲状腺は大きく硬くなります。 症状は、寒がりになる。体がきつい。体重が増える。顔がはれぼったくなる。足がむくむ。無気力になる。脈がおそい。話すのがゆっくりになる。動作が緩慢になる。髪が抜ける。皮膚が乾燥するなどです。治療は不足している甲状腺ホルモンを補います。(飲み薬) この病気も気づかずに放っておくと昏睡になることもあります。

    ***妊娠中のかたへ*** 
    妊娠中は甲状腺ホルモンを正常にコントロールしておくことが大切です。妊娠中だからといってお薬をのむことを怖がることはありません。逆に甲状腺ホルモンが高すぎたり、不足していると流産しやすかったり、胎児に悪影響を及ぼします。甲状腺ホルモンは胎児の中枢神経の発達に必要不可欠であり、母体の甲状腺ホルモンが不足していると胎児に影響がでます。現在妊娠中のかた、今治療中の方、これから予定の方はよく医師に相談してください。また、妊娠や出産を契機に甲状腺の病気を引き起こすことがあります。今までに甲状腺の病気をしたことがある方はご注意ください。 甲状腺の薬は授乳中も内服して大丈夫です。

  2. 甲状腺の腫瘍

    甲状腺は腫瘍ができることが多い臓器です。
    腫瘍には良性のものと悪性(がん)のものとあります。がんの場合は手術をして取り除かなければなりません。また良性のものでも大きさや腫瘍の種類によっては手術が必要です。
    大きな腫瘍の場合は頚部の腫れやのどの異和感(のみこみにくい、ものが引っかかる)声が出にくいなどの症状を伴うこともありますが、小さい腫瘍の場合は自覚症状がありません。超音波の検査の際に偶然小さい腫瘍がみつかることがあります。

    腫瘍の検査
    **吸引細胞診**
    悪性の腫瘍かどうかをはっきりさせるためには、超音波で腫瘍を見ながら、針を腫瘍に刺し、細胞をとる検査(吸引細胞診)をします。このとき使う針は採血のときより細い針を使います。局所麻酔なしで行います。検査はごく短時間で終わることが多いです。

    **甲状腺の超音波検査**
    当科では甲状腺の超音波(エコー)検査を行っています。
    エコー検査では超音波を使い甲状腺の中にできものがあるかどうか、良性か悪性かを診断したり、甲状腺の中の血液の流れをみて甲状腺の機能を推測することもできます。超音波の検査は痛みを伴いません。絶食なども必要ありません。首を触って何も触れなくても一度は甲状腺をエコーで観察しておくとよいでしょう。時に、偶然に癌が見つかることもあります。

    **エタノール治療( PEIT )**
    甲状腺の腫瘍には、嚢胞といって水がたまった袋ができることがあります。基本的に良性の腫瘍です。これは小さいものなら治療は必要ではありません。しかし、嚢胞が大きくなると首が腫れ、自覚症状がでてきます。また気管を圧迫することもあります。針をさして中の水を抜けば腫れは引きます。一度中の液を除いただけで治ってしまう方もいますが、中には何度抜いてもすぐ液が貯まってくる方もいます。繰り返し腫れてくる方は、腫瘍の内側にエタノールという薬(アルコール)を注射して腫瘍を小さくし、腫れるのを防ぐ治療もあります。昔は嚢胞も手術の対象になっていた時代もありましたが、今では嚢胞が良性なら手術をすることはまずなくなりました。

    甲状腺の癌といわれたら、
    状腺の悪性腫瘍には大きくわけて5種類あります。ほとんどの場合は乳頭癌のことが多いです。
    この癌は癌といっても非常におとなしく、手術をして取り除けば10年以上生存する方は80から90%です。乳頭癌に関しては癌だからといって必要以上に怖がることはありません。早いうちに手術すれば、傷も小さく侵襲(手術によるダメージ)も少なくて すみます。早い段階なら声を失うこともありません。またその他の癌にみられるような放射線による治療や抗癌剤による治療は乳頭癌では行うことはまずありません。

****要注意!!****

最近ダイエット食品をして販売されている食品や錠剤を摂取して甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンが過剰になる状態)を引き起こす症例があります。
健康食品やダイエット食品、痩身のための錠剤などには時に甲状腺ホルモンが含有されていて、そのために体重減少をおこしていることがあります。これは健康的なやせ方ではありません。必要以上に甲状腺ホルモンをとると月経周期が狂ったり、骨にも悪影響を与えたりします。そのようなあやしい食品には気をつけましょう。
ホルモン剤は薬剤です。使い方や服用方法をまちがえると劇薬にもなります。
美しくなるために痩せることは、健康的に痩せなければならず、健康を損ねて痩せるのであれば本末転倒です。