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病気について

低血糖とその対策

准教授 田尻 祐司

1) 低血糖について

薬物(インスリン注射や一部の飲み薬)で血糖コントロールを行う場合、その日の食事量や内容、または運動量の違いにより血糖が正常下限(通常70mg/dl)を下回ることがあります。これを低血糖と呼び、糖尿病の治療中にはしばしば遭遇する状態です。

2) 低血糖の症状

個人差はかなりありますが、一般的には以下の症状を認めることが多いようです。

  1. 自律神経(交感神経)の症状
    薬物(インスリン注射や一部の飲み薬)で血糖コントロールを行う場合、その日の食事量や内容、または運動量の違いにより血糖が正常下限(通常70mg/dl)を下回ることがあります。これを低血糖と呼び、糖尿病の治療中にはしばしば遭遇する状態です。

  2. 低血糖の症状
    さらに血糖が50mg/dl未満とくに45mg/dlあたりに低下すると、集中力の低下、疲労感、眠気、錯乱、脱力、めまい、うまくしゃべれない、物が二重に見える、などの症状が起き、さらに低下すると意識障害(失神など)を来たす危険性も出て来ます。これらは中枢神経の症状で、ブドウ糖の欠乏により脳が正常に活動しなくなりつつあることを示すものです。

3) 無自覚性低血糖

糖尿病患者さんの全員が一律に上記の症状を認めるかというと、そうではない場合があります。
過去1・2ヶ月の間にひどい低血糖を1回以上起こしたことのある患者さんや、糖尿病による神経障害の強い患者さんでは血糖値が50になっても警告症状が無いといったことも少なからず見うけられます。これを無自覚性低血糖症と呼びます。
無自覚性低血糖症の場合、血糖値が低下しても警告症状を自覚しにくいため、大脳の血糖不足の症状(中枢神経症状)が突然出現する、極端な場合前触れなしに突然意識を失う恐れもあります。こういった事が例えば車の運転中や高い所での作業中に起こった場合、生命にもかかわる可能性もあります。

*無自覚性低血糖症の対策

  1. やはり警告症状がありませんので、自己血糖測定を頻回に行う必要があり、血糖値が一定以下ならば、症状がなくても血糖を上げる治療をしなければなりません。
  2. 過去の報告では、厳重に低血糖が起こらないように予防すると、約1ヶ月ぐらいから徐々に警告症状を感じる血糖閾値が上昇し始める事が言われており、我々の検討の結果でも6ヶ月完全に低血糖を予防すると、低血糖閾値はほぼ正常化するようです。
    ③米国では血糖認識トレーニング(BGAT-3)なども低血糖の予知などに有効と考えられ、日本でも徐々に浸透しつつあります。

4) 低血糖の原因

インスリン注射(種類 量に関わらず)やSU剤(スルホニル尿素剤:アマリール、グリミクロン、オイグルコン、ダオニールなど)、グリニド製剤(ファスティック、スターシス、グルファスト)を使っている場合低血糖の可能性があります。
SU剤以外の飲み薬(ビグアナイド剤やαグルコシダ-ゼ阻害剤など)は通常の生活をしている範囲では低血糖を起こす可能性はきわめて低いと言われていますが、上記の治療と併用する場合は低血糖の危険性があり注意を要します。

血糖値を下げる薬やインスリン注射は、ほぼ決められた時刻に一日に3回食事を摂る事を前提として処方されています。患者サイドの原因としては、食事時間がずれる(遅れる)あるいは食事を抜く、といった極めて基本的な事が一番多いようです。低血糖予防の意味からも規則正しい食生活を心がけて下さい。
インスリン注射や薬の量を間違えて(つまり通常より多く)施行してしまった場合も低血糖の危険性があります。このような時は食事の量を多く摂る、捕食をするなどで対応しますが、判断に苦慮する際には主治医に連絡して指示をもらいましょう。

5) 低血糖の治療

低血糖の治療は糖質の補給に他なりません。
砂糖もしくはブドウ糖を10~15g(市販のスティックタイプのシュガーなら2本程度)を飲み、15分ほど経っても回復しない場合は、さらに砂糖を同量追加します。お菓子類やパン類は吸収に時間がかかるので低血糖の治療には向きません。(ただし低血糖の予防には役立ちます。) 

もし身近に砂糖がない場合は、市販のジュースで代用してください。メーカーによって入っている糖質の種類や量が異なりますが、100~150mlを飲用します。ただし、この場合ダイエット飲料では役に立ちません。

αグルコシダーゼ阻害剤(ベイスン、グルコバイ、セイブル)で治療している場合は、砂糖を飲んでも薬の効果により一部がブドウ糖となるまで時間がかかっており、低血糖症状が改善されにくい場合があります。この場合はブドウ糖を服用してください。

無自覚性低血糖の疑いがある患者さんはやはり家族の協力が必要です。意識がない場合は家族の手によるグルカゴン注射などが必要になる場合があります。

6) さいごに

低血糖は薬物を用いて治療されている患者さんの多くが経験しますが、正確な知識や対処方法を理解しておけば、恐れる必要はありません。低血糖は逆の言い方をすれば血糖コントロールが良好な証拠でもあるという考え方もできます。低血糖を怖がって、指示カロリー以上の食事を摂ったり、補食といいつつ間食をしていては、糖尿病治療の基本から外れてしまいます。低血糖の知識を身に付け、対処することが重要だと思います。